米軍属による女性暴行・死体遺棄事件に対する声明
駐日アメリカ合衆国大使 キャロライン・ケネディ 様
アメリカ総領事 ジョエル・エレンライク 様
2016年5月に沖縄県うるま市の女性会社員が遺体で見つかった事件で、元海兵隊で米軍属の男が暴行殺人・死体遺棄の容疑で逮捕されました。わたしたちは、事件の背景にある沖縄に置かれた米軍基地との因果関係を感じざるを得ません。わたしたちは琉球・沖縄の歴史研究・教育にたずさわる立場から、沖縄の駐留米軍および軍属関係者の犯罪行為に対する「抗議」の意味を込め声明を発表します。
歴史をふりかえると、沖縄では米軍兵士や軍属による女性暴行事件が数多く起こっています。周知のようにペリー艦隊が那覇に寄港した際にも米兵による女性暴行事件が発生しました(通称「ボード事件」)。ペリー艦隊が琉球に滞在中、女性暴行も含め、琉球の人びとに対する暴行は、「ボード事件」以外にも散見することができます。
第二次大戦後、米軍の占領下では数多くの女性暴行事件が発生し、1972年の日本復帰(施政権の日本への返還)後においてもなお、あとを絶ちません。事件のたびに政府関係者は、「二度とあってはならないこと、米軍に綱紀粛正を強く申し入れる」という常套句を繰り返してきたことは、広く知られるところとなっています。しかし、より本質的な問題は、私たちひとりひとりが過去の歴史的事実を忘れることなく、その記憶のバトンを「未来の世代」に伝えていくことができるかが問われているのではないでしょうか。
今回、起こった事件を機にあらためて「歴史の声」に静かに耳を傾けつつ、より良い未来に進むことを希望いたします。そのうえで、米軍関係者による犯罪の再発防止を強くもとめます。
2016年6月30日
琉球大学史学会有志一同(五十音順)
赤嶺政信 麻生伸一
伊藤陽寿 上里隆史
大城洋介 金城善
里井洋一 下郡剛
下地治人 高江洲昌哉
豊見山和行 西里喜行
花木宏直 深澤秋人
前田舟子 前田勇樹
真栄平房昭 山田浩世
屋良健一郎